山羊と狐と海岸で

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Netflix 「浅草キッド」備忘録

劇団ひとり×大泉洋が放つ傑作

劇団ひとりの長編映画は監督デビュー作、2014年の「青天の霹靂」以来の2作目だ。この作品も大泉洋とのW主演という形であり、とても面白かったし、世間の評判も良かったので、これからもっと映画を撮るのかと思っていたが、意外とそこから7年空いての今作「浅草キッド」に至った。そして今作も柳楽優弥と大泉洋のW主演となっている。

昨年からNetflixで公開され、見よう見ようと思っていたまま時間が過ぎてしまったが、やっと本日に見ることができた。

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元々の原作は北野武の小説「浅草キッド」であり、内容は伝説の浅草芸人と言われた深見千三郎(大泉洋)とその弟子である北野武(柳楽優弥)の伝記小説であった。幾度か映像化されたみたいだが、劇団ひとり的に納得できるものでなかったので、自分で撮ろうという考えに至ったとのこと。

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自分自身もビートたけし、北野武の大ファンであり、小さい頃からテレビで見てたし、監督作品もほぼ全部見ている。しかも同じ足立区出身、隣町であることや1人暮らしを始めたした街が北野武の生まれ育った町でもあった。そのことから勝手に親近感を覚え、足立区出身である唯一の誇りだった。

前々から北野武が健在のうちに、大好きな作品で、夏になると必ず見る「菊次郎の夏」や聾唖者の儚い一夏を描いた「あの夏、一番静かな海。」または日本映画史上に残るラストの「キッズリターン」のようなヒューマン映画ももう一度作ってほしいという気持ちが強くあった。特に楽曲の「浅草キッド」を題材にした映画が見たかった。

89年の映画デビュー作の「その男、凶暴につき」から2、3年に1作のペースで映画を撮り続けてきた北野武だが、2017年公開の「アウトレイジ最終章」から4年経った2021年に雑誌の女性自身の記事で「最後の作品」として時代劇を制作中との記事が出た。これが本当に最後であれば、自分が求めていた楽曲「浅草キッド」の伝記映画は見れないことが決定してしまった。

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しかし、そんな中での劇団ひとりによる深見千三郎と北野武の伝記映画「浅草キッド」。これが劇団ひとりの2人に対する尊敬の念と愛が存分に詰まりに詰まっている作品で、自分の中の欲求はほぼ解消されたに等しいくらい素晴らしい作品だった。

 

伝説の浅草芸人 深見千三郎

ほとんどの人は深見千三郎のことは知らないだろう。テレビ嫌いであったことから出演したことがなく、浅草の舞台でしか見ることがなかったため映像記録もほとんどないため、伝説の浅草芸人と呼ばれた。弟子にも北野武だけでなく、東八郎(東MAXの父)や萩原欣一などそのごのお笑い界を背負ってたつ人物も多くいたという。

深見千三郎のことは以前からNHKで放送された「たけし誕生〜オイラと師匠と浅草〜」を拝見していたこともあって、深見千三郎がどのような人物でどのような生涯だったのかを知る機会があったため、今回の「浅草キッド」もおおよその流れの検討はついてはいた。

しかし、深見千三郎がどのような人物でどのような人生を送るかを知っているが故に、言動一つ一つを丁寧に演出しているため、感情移入がしやすく、感動を覚えることもできた。

 

(ここからなるべくネタバレしないように記載、ただところどころネタバレ箇所あり)

この映画には3人の人生が描かれる。

1人目は北野武だ。武は芸人としての底辺からトップまで上り詰める、いわば成功した象徴だ。

2人目は深見千三郎。芸人として確固たる地位を築き、トップにいたが時代に飲まれ、没落していく。栄枯盛衰を表現。

3人目は門脇麦が演じるストリッパーの千春だ。千春は深見のように確固たる地位も築いていなければ、武のようにトップにもいけない。しかし「歌手」という夢を持っているが、作中のあるシーンによって、自分の置かれている環境や力量に限界を感じ、夢を諦める人物像として描かれる。

世の中の大半は千春の人間だろう。深見や武のような人間はごく稀にしかいないのだ。好きだからやり続けても、それで成功する保証なんてどこにもない。それならば、諦めて違う道で生きていくというのは何も間違っている選択でないだろう。視聴者も9割はきっと千春だ。誰もが心のどこかに千春がいるからこそ、北野武のようなまっすぐ直向きに突き進む人間が眩しく、羨ましく、時には嫉妬もしてしまうのかもしれない。

そんな千春がいたことによって、千春を基準として登っていく北野武と時代に飲み込まれて行く深見をより引き立たせ、今作品の深みがよく出たのではないかと思う。また作中の舞台で歌った歌が高橋真梨子の「ジョニィへの伝言」なのがまた良かった。この歌の歌詞を知っていると、千春の今後を暗示されているのかなと推測することができた。余談だが、エレカシの宮本浩次のカバーの「ジョニィへの伝言」も素晴らしい。

ただ世の中のほとんどが千春側だからこそ、武や深見の姿を見て自分を奮い立たせてみたり、もう1度好きなことを始めてみたりと勇気をもらえるはずだ。だからこそ楽曲の浅草キッド内の歌詞である「夢は捨てたと言わないで 他に道なき2人なのに」がまるで他人事に思えない感覚に思えた。

映画の内容自体は以前にNHKでの番組やネットで漁った記憶が間違いでなければほとんど史実に忠実であった。適当に作った作品にありがちな脚色や大げさな表現はせず、劇団ひとりがインタビューで話していた通り、2人を汚すことなく忠実に描いた演出にとても心が動かされた。ざっくり言うと武が深見の弟子になり、力をつけ巣立っていくと、逆に深見は…となるのだが

もうこれはダラダラと素人の文章読んでないで、実際に見た方が早い。というか見るべし。

 

あと個人的に嬉しかったのは足立区のワードが出たり、足立区の地名が出たりと小さい嬉しいポイントがあった。その中、千春がカタギになって生活をしているシーンがあるのだが、

その団地感が自分の幼少期の原風景。ってか足立区の原風景。あの場末感、足立区感はすごい。

自身は団地で育っていないが、大袈裟に言うと同級生の7、8割は団地住まいだったからあの感じに異様な懐かしさを覚えてしまった。

 

最後に

今回の劇団ひとり監督の「淺草キッド」は当の本人である北野武も観たこと、そして涙したことをテレビで話されていた。「実際はもっと悲惨だったんだよ」と素直にならずに悪態つく癖もきっと師匠譲りなのだろう。

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あと柳楽優弥の立ち姿だったり、佇まいがめちゃくちゃ上手いなと思ってエンドロールを見ていたら「北野武、演技指導 松村邦洋」のクレジットもあり、さすが振ると何時間でもモノマネをするという狂気のまっちゃんが指導していたのもあるので、あんな佇まいまで北野武が憑依したような演技になったのかと納得した。

あとビートきよし役のナイツ土屋の演技もすごい良かった。本物の淺草芸人なだけあって、まるで本物のコンビのような、それでいて主張しすぎない、すっと喉を通り過ぎる素晴らしい演技だっと感じた。あの雰囲気は土屋だからこそ良かったのかもしれない。間違っても相方の塙だと丸太置いておいた方がマシなんじゃないかと思うくらいの棒演技になっていただろう。

あとは北野武自身で楽曲「淺草キッド」をモチーフにした映画を撮ってもらうだけだ。ちなみに楽曲の浅草キッドはビートきよしと組む前に組んでた相方に対しての曲と言われており、北野武の才能をまざまざと見せつけられ、その才能の差に悩み、精神を病んでしまい入院。その際に「夢は捨てた」と武へ発言したことに対しての歌だと言われている。

 

何はともあれ最高の映画であった。最近、仕事においてモチベーションが急激な落ち方を見せていたが、「淺草キッド」を見て久しく忘れかけていた仕事のみならず人生全体のモチベーションが上がるような感覚を得られた。もう…劇団ひとり最高!!北野武最高!!!

以上だよ!!バカヤロー!!!!!!